半導体電子材料研究センター
バイオマスレジストの開発
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Our Activity
バイオマスレジストの開発
半導体電子材料研究センターでは、2028年の事業化を目指し、最先端半導体向けに木質由来バイオマスレジストの開発に取り組んでいます。
私たちのレジストはバイオマスを原料とすることで脱炭素社会に貢献し、従来広く使用されてきたPFAS※を含まない環境配慮型レジストです。
さらに、バイオマスの特性を活かした独自技術により、高解像度かつ高プロセス安定性を実現し、次世代EUV露光装置にも対応可能です。
最先端の半導体技術領域で、ニーズに応じたレジスト開発を進めて行きます。
※PFAS:ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物の総称。環境や健康への影響が懸念され、国内外で規制や対策の強化が進む。
半導体は、スマートフォンやパソコン、自動車、家電製品、医療機器など、私たちの生活を支える幅広い分野で使われており、いまや「社会の基盤」ともいえる存在です。
近年は、より高性能で省エネルギーな製品へのニーズが高まる中、半導体製造では微細なパターンを正確に形成する技術がますます重要になっています。
パターンが微細になるほど、ひとつのパッケージにより多くの半導体回路を搭載でき、処理速度の向上や消費電力の低減につながります。
このパターン形成に欠かせない材料が「レジスト」です。レジストは回路形成に不可欠であり、半導体の微細化に対応するため、常に進化が求められています。
紙・パルプ分野で技術を培ってきた王子が、なぜ半導体向けレジスト材料の開発をしているのか?
開発のはじまりは戦略企画部内の小さなプロジェクトチームでした。
現在のチームリーダーを筆頭に、王子が保有する豊富な森林資源と、長年の紙・パルプ事業で培った木質材料に関する知見を最大限に生かせる新規事業テーマを探索した結果、木質由来バイオマスの特性が半導体用レジストに適していることを見出しました。
半導体の微細な回路パターンを形成するために使われる重要な技術「フォトリソグラフィ」では、光で化学的性質が変化する「レジスト」という材料が使用されます。
レジストは光に反応し、ウエハ上に微細なパターンを形成します。パターンの微細化に伴い、レジストには従来より高い光感度が求められており、現在もレジスト材料開発が推進されています。木質由来バイオマスはもともと光により分解されやすい特質を持つ材料です。その特性に着目し、持続可能な素材を使いながら高性能も実現できるレジストの開発に成功しました。
この小さなプロジェクトチームは2025年4月にセンターとして独立し、現在も環境価値と技術価値を両立したレジスト開発を進めています。
木質由来バイオマスの「光で分解されやすい」という特性は、レジスト開発に大きな利点をもたらしました。一方で、従来のレジストでは、高い光感度を得るためにPFASが添加剤として使われています。しかし、PFASは環境や生態系への影響が懸念され、世界的に規制が強化されています。また、光感度を向上させる反面、プロセスの安定性に課題があることも知られています。
私たちのバイオマスレジストは、素材そのものが高い光感受性を持つため、PFASを使用する必要がありません。その結果、環境配慮と高プロセス安定性を両立するレジスト材料を実現しました。
今後も既存レジストの改善とともに、新たなレジスト材料の開発を進めて行きます。
現在、半導体のパターン形成における最小線幅は13nm程度ですが、今後はさらに8nmクラスのさらなる微細化が求められています。これを達成するため、2027年頃には次世代露光装置(High-NA EUV)が市場に投入される予定です。装置の進化に合わせ、それに対応可能なレジスト材料の開発が急務となっています。
私たちが開発したバイオマスレジストは、線幅8nmのパターン形成が可能であることが確認されており、高い解像度を備えています。今後は次世代EUVレジストとしての可能性をさらに高めるため、技術動向を踏まえた実用評価を進め、半導体業界の進化に貢献していきます。
当センターでは半導体前工程向けバイオマスレジスト開発を推進しており、新材料開発と半導体プロセス向け実用評価の2テーマに分担しています。私は主にプロセス評価を担当していますが、オープンな雰囲気でチームメンバーと日頃から意見を交わしており、お互いに協力し合いながら開発業務を推進しています。
半導体プロセス向け実用評価として、レジストサンプルを作製し、半導体関連会社で広く利用されている共用設備で露光実験を行い、社内にて分析評価する流れでプロセス評価を進めています。評価を進めるには各所での調整が必要なため約1ヶ月先まで計画を見通すことが大事です。この週の前半は社外実験やサンプル準備、後半は社内にて評価を行いました。まだ子供が小さいため在宅勤務も利用し、データ解析や資料作成を行っています。
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