イノベーションストーリー

Innovation Story

配向性細胞培養基材 「CellArray-Heart™ (セラレイ・ハート)」

イノベーション推進本部 戦略企画部
インキュベーション推進室

K.S

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イノベーション推進本部 戦略企画部
インキュベーション推進室
上級研究員

「CellArray-Heart™ (セラレイ・ハート)」の誕生

王子HDイノベーション推進本部は、再生医療や創薬に活用できる微細構造を有する細胞培養基材「CellArray-Heart™ (セラレイ・ハート)」の販売を開始しています。
現在、さまざまな組織や臓器の細胞に変化(分化)する能力を持つ万能細胞であるiPS細胞の登場により、再生医療や創薬の分野では動物細胞を使用しないヒトiPS細胞による研究開発が始まっています。しかし、iPS細胞から分化・誘導してつくった目的細胞(iPS心筋細胞など)は、生体内の成熟した細胞と比べて未成熟という問題がありました。そこで、培養液などの生育環境を工夫して、できるだけ生体細胞に近い条件で培養することで、成熟化を促進する研究が大学等で行われています。

戦略企画部では、心筋細胞が生体内で一定方向に並んで(=配向)いることに着目し(図1)、独自の微細加工技術「ナノドットアレイ」により、培養面にナノレベルの微細突起をストライプ状に配置した配向性細胞培養基材「CellArray-Heart™ (セラレイ・ハート)」を開発しました(図2)。

「CellArray-Heart™」でヒトiPS細胞由来心筋細胞を培養すると、細胞は微細構造に沿って配向し、生体内により近い形態となるため、培養細胞の成熟化を促進することが可能になります(図3)。

そして、成熟化が促進したヒトiPS心筋細胞での試験が可能になることで、再生医療や創薬の研究が一層進むことが期待されます。現在、セラレイ・ハートのディッシュ型およびプレート型製品の販売を開始しており、大学・研究機関や製薬会社等からご購入いただけるようになってきました。

現在は、この培養基材を医療・医薬の開発現場でご使用いただくために、プロモーション活動に注力しているところです。さらに、心筋細胞をターゲットとした「CellArray-Heart™」だけでなく、次期アイテムとして他の細胞種を対象とした新しい微細構造付き細胞培養基材の開発も進めています。

(図3)説明
培養面に微細突起をストライプ状に配置した構造。本構造により、iPS心筋細胞の成熟化を促進。また、培養細胞をシートのように剥離・回収することが可能に。

なぜ王子ホールディングスで細胞培養基材が生まれたのか?

製紙業を基幹産業としている王子ホールディングスでなぜ細胞培養基材の開発が進んだのか?と疑問に思われる方も多いと思います。その理由は、当社のコア技術の一つであるフィルムの技術にありました。
2005年頃、付加価値を高めるためフィルムに機能性を持たせる研究が進められ、そこで開発された微細構造技術(ナノドットアレイ技術)を施すことで、フィルムに反射防止などの光学特性を付与する技術を開発しました。そして、2014年頃、文献調査やヒアリング等により、このナノドットアレイ技術を光学用途だけでなく医療用途への応用の可能性を見出して研究開発に着手したということです。

「CellArray-Heart™ (セラレイ・ハート)」をより多くの方々へ

光学用途での研究開発が始まった頃から、15年以上にわたり微細構造の研究開発に携わってきたSさん。テーマ探索、大学教授やお客様へのヒアリング、研究開発、展示会への出展はもちろん、上市後は拡販活動もSさんのチームで行っています。
「ナノドットアレイの開発がここまで来れたのも、一緒に努力してきた仲間たちや指導・支援して頂いた社内外の協力者の方々のおかげです。今後も培養基材の事業化に向けた取り組みと共に、分野に拘らない新たな研究開発を進めて行きたいと思います」

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