イノベーションストーリー

Innovation Story

日本最大級の木質由来 「糖液 ・ エタノール」 のパイロットプラントについて

2025年5月21日、王子製紙株式会社 米子工場内にて、木質由来の糖液・エタノールを製造する日本最大級のパイロットプラントの竣工式を行いました。
この施設は、年間3,000トンの糖液と1,000kLのエタノールの生産能力があります。


   

木から生まれる未来の素材!

イノベーション推進本部、バイオケミカル研究センターでは、化石資源に依存しない既存のプラスチックや燃料などの製造プロセスをバイオマスベースに置き換えた「木質由来の新素材」の開発に取り組んでいます。

中でも注目されているのが、以下の2つの素材です:
〇 木質由来糖液:「バイオものづくり」の基幹原料として多用途への展開が想定されています。
〇 木質由来エタノール:持続可能な航空燃料(SAF)や化学業界における基礎化学品製造に利用可能です。

今回竣工したパイロットプラントは、鳥取県・米子市・日吉津村の支援を受けて建設された実証設備です。
木材を原料に、糖液とエタノールを生産することが可能で、国内最大級の生産能力を備えています。

関連記事→「木質由来のエタノール・糖液の量産化に向けて

当日は、鳥取県知事・平井伸治氏や、当社CMキャラクターのトラウデン直美さんが出席し、
セレモニーとプラント見学会が開催されました。

トラウデン直美さん 「木の可能性って無限大。木に頭が上がらない。」

神事やテープカットを行なった後には、トラウデン直美さんと当社代表取締役社長の磯野とのトークセッションを実施しました。
トラウデン直美さんは、木質由来素材の実物を見て、「環境に優しい素材であること、そして私たちの生活に密接に関わっていること。」と驚きと期待を込めてコメントしました。
また、森林資源を維持しながら持続可能な社会を目指す当社の取り組みに対し「木にスマートに寄り添いながら、私たちの生活を楽しみながら、勉強が進むように。」と、期待を寄せました。

木材からエタノールまで、一気通貫の製造ライン

王子製紙米子工場は、王子グループのグラフィック用紙生産拠点であり、高性能なパルプ製造設備を備えています。
この設備を活用し、製造されたパルプを直接パイロットプラントに供給することで、木材からエタノールまでの一貫生産が可能となりました。

パルプ製造
まずは原料となるパルプの製造から始まります。
米子工場には大量の木材チップが搬入され、これらのチップを水と薬品で煮てパルプを製造します。

製造されたパルプの一部はパイロットプラントへ運ばれます。

糖液・エタノールの製造設備について

製造設備は大きく分けて5工程で構成されています:

❶ 糖化工程
セルロースから糖液を製造
工場から運ばれたパルプは、最初に糖化タンクに入れられ、パルプの主成分であるセルロースを酵素で分解し、グルコースを主成分とする糖液が作られます。この糖液は、プラスチックなど様々な化学製品の原料として利用が期待されています。

❷ 回収工程
酵素を回収することによるコストの削減
使用した酵素を分離・回収し、再利用することでコストを削減します。

❸ 培養工程
糖液を発酵させるために酵母を準備
効率よく発酵できるように、温度や栄養成分を細かく調整し、最適な環境で酵母を培養させます。

❹ 発酵工程
糖液を発酵させてエタノールに変化
糖液に培養した酵母を加えることで、糖液が発酵してエタノールに変わります。

❺ 蒸留工程
高い純度のエタノールを精製
発酵後、エタノールと水の混合液からエタノールを分離・精製します。
エタノールは水より沸点が低いため、加熱して最初に蒸発するエタノールを回収します。
32メートルの高さの蒸留塔を利用し、蒸発と凝縮を繰り返すことで、99%の高純度エタノールを生成します。

持続可能な社会の実現のために

イノベーション推進本部では、再生可能資源である木材を活用し、糖液・エタノールの研究開発を推進しています。
木材は非可食資源であり、トウモロコシやサトウキビと異なり食糧と競合しない点も大きな利点です。
これらの木質由来素材は、石油由来製品の代替原料として幅広い分野での活用が期待され、早期の量産化が求められています。
王子ホールディングスは、既存のパルプ製造工程を活用し、紙づくりで培った技術をベースに事業化を目指しています。

王子グループが目指す、木質由来のバイオものづくり

〇木質由来糖液
木材パルプの主成分であるセルロースを酵素で分解し、グルコースを主成分とする「木質由来糖液」を製造します。これを原料に、微生物の力を活用してプラスチックや繊維、ゴムなどを製造する「バイオものづくり」の基幹素材となります。

〇木質由来エタノール
「木質由来糖液」をプラント内で培養した酵母で発酵させ、「木質由来エタノール」を製造します。
発酵後、蒸留で精製されたエタノールは、SAFや化学工業品の原料として利用できます。


※「バイオものづくり」とは


バイオものづくりとは、遺伝子技術を活用して微生物や動植物等の細胞によって物質を生産することであり、
化学素材、燃料、医薬品、動物繊維、食品等、様々な産業分野で利用される技術です。
(引用:経済産業省発行「バイオものづくり革命の実現2023年4月19日」P14


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