イノベーションストーリー
Innovation Story
王子のCNFが「セルロース学会技術賞」を受賞

― CNF技術の革新と応用製品開発が高評価 ―
王子ホールディングス株式会社は、2025年7月に開催された第32回セルロース学会年次大会において、同社のCNF(セルロースナノファイバー)技術に関する取り組みが高く評価され、「セルロース学会技術賞」を受賞しました。

第32回セルロース学会年次大会 運営委員会よりご提供
受賞内容について
受賞対象となった技術
リン酸化CNFに関する基盤技術確立と応用製品の開発
この技術は、CNFの機能性を高めるリン酸化処理を施し、電解質膜やゴム複合素材などへの応用を可能にしたものです。これにより、環境配慮型素材としてのCNFの可能性が大きく広がりました。
概要
1. 技術開発の歩みと独自技術の確立
王子ホールディングスは1990年代からセルロースナノファイバー(CNF)の研究を開始し、独自のリン酸化CNF技術を中心に開発を進めてきました。大学との共同研究を通じて、セルロースの結晶構造を維持しつつリン酸基を導入することで、静電反発を利用した高分散性のナノファイバー化を実現しました。2015年には実証生産設備が稼働し、完全ナノ化(繊維幅約3nm)のCNF製造が可能となりました。さらに、用途に応じたラインナップ拡充の派生技術も開発されています。


2. 実用化と応用展開
開発されたリン酸化CNFは、その高透明性・高増粘性・高チキソトロピー性・耐塩性・pH安定性などの特長を活かし、さまざまな分野で実用化されています。カーケミカル用品や化粧品原料、生コンクリート圧送用先行剤などに採用されており、2017年以降は天然ゴムとの複合材も開発。2024年度には天然ゴム/CNF複合材の量産設備が導入され、早期実用化を目指しています。また、透明連続シート(アウロ・ヴェール)は高透明・高強度・柔軟性・熱安定性を持ち、スポーツ用品や自動車部材にも応用されています。

3. 今後の展望と社会的意義
今後もCNF技術を活用した新規素材や複合材の開発を推進し、カーボンニュートラルや省エネルギーなど社会課題の解決に貢献することを目指しています。
既存事業との融合によるセルロース樹脂複合材の開発や、燃料電池用部材への応用など、用途・ニーズに応じた多様な展開が進んでいます。研究開発から実用化、普及拡大まで一貫した体制を構築し、持続可能な社会の実現に向けて取り組みを続けています。
記念講演「王子ホールディングスにおけるCNF開発の歩み」
表彰式では、王子HDの代表者であるCNF創造センターの小林センター長が登壇し、受賞技術の概要と今後の展望について講演を行いました。
講演内容はとして、資料には、ゴム複合素材や電解質膜をはじめ、全熱交換エレメントなど、最新の応用事例も含めた、より実用化に向けた進展が紹介されました。
【詳細ページ】 CNF創造センターご紹介

第32回セルロース学会年次大会 運営委員会よりご提供
学会からの評価
学会側からは、当社の技術が「セルロースの応用可能性を飛躍的に拡張するものであり、産業界への貢献度が高い」との評価が寄せられ、王子のCNFが広く認知される機会となりました。
今後の展開
王子HDでは、今回の受賞を契機に、さらなる技術開発と製品化を加速させる方針です。特に、CNFを活用した新素材の開発や、持続可能な社会への貢献を目指した研究が進められています。
王子のリン酸エステル化CNF
王子グループでは、製造時の微細化エネルギーを低減する有効な手法として「リン酸エステル化法」を採用しています。
この方法により従来に比べ高い生産効率で高品質(高透明・高粘度・チキソ性)なCNFの製造が可能になりました。
2017年に王子製紙富岡工場内においてCNF実証製造設備の稼動を開始しています。
現在は、透明CNFスラリー「AUROVISCO(アウロ・ヴィスコ)」、粗大CNFスラリーなどの多彩なCNF製造を行い、
積極的なサンプル提供と事業化のための用途開発をすすめています。
参考サイト
●CNF創造センターご紹介(当サイト内)
●王子のセルロースナノファイバー(CNF) (王子グループコーポレートサイト内)
