イノベーションストーリー

Innovation Story

森林価値の見える化への取り組み  

― 森林経営と生物多様性について ―

2023年7月に発足した森林資源研究センターでは、木質資源の有効活用、林業の省力化、そして森林価値の見える化をテーマに、日々調査・研究に取り組んでいます。
そのうち、森林価値の見える化においては、リモートセンシング技術などを活用し、森林の多面的機能:木材生産機能に加え、水源涵養、土砂流出・崩落防止、生物多様性の保全などの様々な機能、の見える化に取り組んでいます。今回は持続可能な森林経営と生物多様性について、ご紹介します。


   

日本の森林と生物多様性

 日本は南北に長く伸びた国土を有し、海岸から高山まで大きな標高差があるため、亜熱帯から亜寒帯・高山帯まで多様な気候帯が存在します。豊富な降水量にも恵まれ、森林面積は約2,500万ヘクタール(国土の約3分の2)を占め、陸域における最大の生物種の宝庫となっています。生産者である植物のほか、消費者である昆虫類、鳥類、哺乳類、分解者である土壌動物や土壌微生物など、多様な生物群が生育・生息しています。
 健全な生物多様性が維持されることで、人間は食料や水、木材、大気中の酸素の供給など、自然からさまざまな恩恵を享受できます。近年、生物多様性の保全は気候変動問題と並ぶ地球規模の課題として、関心が高まっています。

<左図>小鍋谷山林 / <右図>森林から出材した丸太

王子の森

 王子グループは、北海道から九州まで日本国内で合計18.8万ヘクタール(約650箇所)の社有林を保有・管理しており、その構成は人工林が4割、天然林が6割です。山林ごと、林分ごとに気候や地形、土壌、周辺環境などを踏まえ、適地適木の考え方のもとで植林-伐採-再植林のサイクルを実践し、100年以上にわたり持続可能な森林経営を行ってきました。人工林の樹種として、北海道ではトドマツ、カラマツなど、本州以南ではスギ、ヒノキなどを植林しており、その平均樹齢はおよそ60年生になり、現在、主伐期を迎えています。
 天然林では特に広葉樹で様々な樹種が見られますが、例えば、北海道から東北の冷温帯ではミズナラやブナ、イタヤカエデなど、九州や四国などの暖温帯ではスダジイやシラカシ、ウラジロガシなどのシイ類やカシ類が見られます。
このように、王子グループの社有林には多様なタイプの森林が分布し、各森林の発達段階に応じた、さまざまな生物種が生育・生息しています。また、同一種の中でも多様な遺伝的特性が保持されています。

<左図>猿払山林の人工林 / <右図>浦幌山林の天然林

モザイク林相の事例

 人工林を含む全ての森林は、多様な生物の生育・生息の場として生物多様性の保全に寄与していることから、林野庁は様々な生育段階や樹種から構成される森林が、面的な広がりにおいて、モザイク状にバランスよく配置されている状態を目指して、森林整備を推進することを推奨しています。
 持続可能な森林経営を長年実践してきた王子グループでは、こうしたモザイク林相が良く分かる山林もあります。例えば、下の写真に示す栗山山林では、渓流沿いや尾根部に広葉樹を保全し、比較的平坦で木材生産が可能な場所にはトドマツなどの針葉樹を植栽・管理していることで、狭い範囲内であるにも関わらず、モザイク林相が良く分かります。
こうしたこともドローンを自社で積極的に活用するようになり、改めて、見える化することが出来ました。

ドローンで撮影した栗山山林のモザイク林相の事例

持続可能な森林経営と生物多様性

 林野庁が2024年3月に公表した『森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針』には、「林業事業体等が生物多様性の保全に向けて取り組むべきことは、持続可能な森林経営そのものであり、森林の有する多面的機能の確保や生態系に配慮した施業等による木材の供給を通じて、社会経済に貢献することである。また、生物多様性保全に資する森林管理は、持続的な木材生産を行うためにも重要であり、下草の生育による土壌流出の防止や、病害虫のコントロール、種子の散布、土壌微生物による栄養分の供給などにより、樹木の健全な生育を確保することができる。」とあります。
 森林資源研究センターでは、ドローンなどのリモートセンシング技術も取り入れながら、森林の状態と変化のモニタリングを行い、王子グループの持続可能な森林経営に貢献していきます。

<左図>高性能なカメラを搭載したドローン / <右図>湧別山林

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持続可能な森林経営 | 環境 | ステナビリティ | 王子ホールディングス
(外部サイト)
森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針(令和7年3月改定) | 林野庁(外部サイト)


森林資源研究センター


”森林を健全に育て、
その森林資源を活かした製品を創造し、社会に届けることで、
希望あふれる地球の未来の実現に向け、時代を動かしていく"

という、王子ホールディングスのパーパス(存在意義) の意味をより深く探求するために、
2023年7月に新しく生まれた部署です。
王子グループ内外の会社・部署とも連携し、森林資源の可能性を探求します。


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