イノベーションストーリー

Innovation Story

海外研修について② -ドイツ編 –

Kanzan Spezialpapiere GmbH

イノベーション推進本部では、国際的に活躍する研究開発人材の育成を目指し
王子イメージングメディア株式会社の協力のもと、海外拠点への出向制度を実施しています。
研修生たちは、ドイツ、アメリカ、ブラジル、タイなど、幅広い地域で貴重な経験を積んでいます。
今回は、ドイツで活躍するM.Sさんに、現地での業務や生活、そして得た経験についてお話を伺いました。

M.S

M.S

出向先/ドイツ
Kanzan Spezialpapiere GmbH
(以下KANZAN)
イノベーション推進本部海外研修生

日本ではCNFなどパルプの新しい可能性を広げる研究開発に従事

イノベーション推進本部での経歴について

大学・大学院時代 森林科学専攻
2019年入社 INV推進本部CNF創造センターで研究開発職として約4年半勤務。
      主にCNFやパルプを原料とする組み合わせによる複合材料の開発に携わり、
      2023年にはセルロース複合容器製剤(タフセルぺレット)のリリースに携わる
2023年11月 海外研修生として感熱紙・インクジェット紙の製造販売を行うKANZANへ出向

実際の生産設備の運用を海外で学びたい

海外研修制度に応募した経緯を教えてください。

M.S M.S
イノベーション推進本部で研究職として材料開発を進めていく中で、製造工程の最適化とコストダウン提案に関する知識と経験が自分の中で課題であると感じるようになりました。
そんな時、海外研修制度が始まることを知り、興味を持ちました。
事業会社の駐在員として実際の生産設備の運用を間近で学び、製品開発から生産・販売までの一連の流れを理解することで、多角的なコストダウンの視点に繋げられると感じ、海外研修生に応募しました。

感熱紙の開発に従事、原材料調達から顧客対応まで幅広い業務

現在の業務内容と、そのやりがいについてお聞かせください。

M.S M.S
現在は、主力製品である感熱紙の処方開発に携わっています。既存製品の品質向上やコスト削減のため、原材料を安価なものに変更する、配合を変える等、日々取り組んでいます。
開発から営業生産、顧客フィードバックまで広範囲な工程に関与できることで、取り組んだ仕事が社会・会社収益のために貢献できていることを実感でき、非常にやりがいを感じています。
その他にも、欧州市場ニーズを調査するためドイツ国内外の展示会等へ出張したり、原材料サプライヤーとの打ち合わせに積極的に参加して原材料調達についても学んだりしています。それまでは接点がなかった営業、品質保証、資材等の様々な部署の方との関わりながら業務が出来ることにも刺激を受けています。

多様な職場環境と強い労働者の権利意識

海外で働いて、日本の働き方とはどのような違いを感じましたか?

M.S M.S
個人の契約条件や職場によって異なるとは思いますが、私の所属していたR&Dでは朝7時半頃に出社して午後3時半頃には帰る人が多く、また基本的に残業はしていませんでした。車で30分くらいのところに住んでいる人がほとんどだったので、帰宅してからの時間が充実しそうだと感じました。
一方で、KANZAN全体を見ると、1時間半以上かけて通勤している人や単身赴任の人もいたので、個人の事情によるという点は日本と同じだと思います。
また、ドイツでは有給休暇とは別で病気休暇が設けられていたり、夏季に3週間ほどの休暇を取得したりと、あくまで生活や人生の中に仕事がある、という考え方を感じました。
あらゆる業種で労働条件の交渉やそれに伴うストライキが行われている様子が頻繁にニュースになっており、労働者側も自分たちの手で労働条件や職場環境を改善し、権利を守っていこうという意識が強いことも特徴の一つだと思います。

豊富な種類のパンやBIO食品とマーケットが魅力の食文化

海外で暮らして、日本の暮らしとはどのような違いがありましたか?

M.S M.S
日本人はお米へのこだわりが強い人が多いと思いますが、ドイツでは主食がパンやジャガイモなので、それらへのこだわりが強いと感じる場面がありました。
パン屋が多いのはもちろんですが、多くのスーパーでは既製品のほかに、店のオーブンで焼いたパンがずらりと棚に陳列されています。また、ジャガイモは数kgのまとめ売りが主流で、人によっては一度に5kg以上購入している様子も見かけます。多くの場面で料理にジャガイモ(フライ、グリル、など)が添えられており、料理によってたくさんの種類を使い分けています。
またBIO(オーガニック)食品が豊富で、普通のスーパーでも販売しているほかBIO製品専門のスーパーもあります。スーパーマーケット以外に、Marktと呼ばれる市場文化が盛んで、KANZANのあるDürenでも週に数回、新鮮な野菜や果物、肉や花が売られる市場が開催されています。
自分が食べるものの品質や生産者をきちんと自分で判断したいと考える人が多いのかなと感じました。

(左)スーパーマーケットに並ぶ豊富な種類のパン/(左)Dürenの市場

サーキュラーエコノミー実現のためのリサイクル促進制度と設備

「環境への配慮やエコ意識」の違いを感じることがありますか?

M.S M.S
あらゆる分野で、サーキュラーエコノミー実現への意識が強いです。
例えば衣料品等の繊維廃棄物は町中に設置されている回収ボックスに入れなければならず、生ごみは通常のごみと分けて専用の堆肥化ボックスに捨てる必要があります。また、特にプラスチック製品に関して多くの取り組みがあり、飲料ボトルのデポジット1)や、包装材のグリーンドットマーク2)など、リサイクルが推進されています。一方で、道を歩けばごみが落ちていることも多く、様々なバックグラウンドを持つ人たちが住む社会だからこそ、まずは制度や設備を整えることで、環境に対する配慮を実現させようとしていると感じました。

(1)リユース・リサイクル対象の飲料容器の返却率を上げるため、容器に保証金をつける制度。
 購入時に商品価格のほかにPfandと呼ばれるデポジットを払い、返却時に割引又は返金を受ける。ペットボトル以外に缶や一部の瓶も対象。
(2)容器包装材に表示される商標。回収・再利用義務対象の容器包装材に印刷させ、関連事業者からライセンス料を徴収することで収集・リサイクルを行う。]

(左)衣類回収ボックス/(右)返却時に割引又は返金を受けられる製品についているPfandマーク

休日は国内外の欧州を旅しながら現地の食材や文化を体験!

海外生活で、休日はどのように過ごしていますか?

M.S M.S
もともと料理をするのが好きだったこともあり、週末は夫と料理を楽しんでいます。ドイツでは手に入れるのが難しい食材もあり、逆に日本ではあまり見かけない食材も多いので、レシピを相談しながら仕上げていくのが楽しいです。
また休暇を利用してドイツ国内やヨーロッパの国々を旅行しています。インターネット上で世界中どこの景色でも見ることができますが、その場所の空気感やその時の季節を感じながら実際に経験することで、受ける印象や記憶への残り方が変わると感じました。冬にはドイツ各地のクリスマスマーケットを巡って楽しみました。
ドイツで最も印象に残った料理は、Mettwurstです。これは生の豚挽き肉を塩や香辛料で味付けしたソーセージで、私はペースト状になったものをパンに乗せて食べました。塩気のある新鮮な生肉がパンの風味と良く合ってとてもおいしかったのですが、やはり豚肉を生で食べるということで、ドキドキしました。

(左上)シチリア島のエトナ山/(左下)バルセロナのサグラダファミリア/(中央)デュッセルドルフのクリスマスマーケット
(右上)ベルリンのブランデンブルク門/(右下)生の豚挽き肉のソーセージMettwurst(メットヴルスト)

生産性や収益性と優れた品質のバランスを意識した環境配慮型製品の開発を目指す

最後に、海外での経験を今後どう活かしたいか教えてください。

M.S M.S
今の目標は、KANZANの競争力強化に繋がるような品質改善とコストダウン案件を一つでも多く追求し続けることです。また世界的な脱プラ・減プラの流れを逃さず、新たな収益源となるような製品についても、王子グループ内の知見を活用するとともに展示会やサプライヤーとの情報交換を通して検討していきたいです。
将来的にはKANZANで得た知識や経験を活かして、生産性や収益性と、優れた品質のバランスを意識した開発を目指し、会社に貢献していきたいと思います。


KANZAN:Kanzan Spezialpapiere GmbH


王子イメージングメディア株式会社の海外拠点【ドイツ】



Kanzan Spezialpapiere(KANZAN)はドイツ・ノルトライン・ヴェストファーレン州にある
工業都市デューレン市に位置しています。
ここは古くから製紙業、繊維工業、ガラス工業などが盛んな町です。
主に感熱記録紙、インクジェット用紙を製造・販売しています。

KANZAN:https://www.kanzan.de/home/
王子イメージングメディア株式会社:https://www.ojiimagingmedia.co.jp/


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